ちょっと最近、時間の流れが速すぎる

日々の雑談や本の感想などを書いていきます。

三津田信三「首無の如き祟るもの」感想

 

大みそかから元日にかけて読んでた本。

新年早々おどろおどろしい本を読むなあと自分でも呆れるけれど、半分くらいはこういう本を読んでるからしょうがない。

 

三津田信三の刀城言耶シリーズの三作目で、「厭魅の如き憑くもの」と「凶鳥の如き忌むもの」は前に読んだ。

これも今まで同様、横溝正史的な田舎の集落にある旧家で古くから伝わる昔話にまつわる殺人事件が、っていうタイプの話。

三津田信三という作家はミステリーとホラーを融合させたような作風が持ち味らしく、この作品もミステリー的な解決の心地よさもありながら、ホラーのような恐ろしさも併せ持っている。

この刀城言耶シリーズ以外の著作を読んでないので他の作品についてはよくわからないのだが、肝心の謎解きが二転三転するのも特徴。

最初の謎解きで「こういうことだったのか!」って納得したのに「やっぱりさっきの謎解きは間違ってたわ」「二つ目の謎解きもちょっと違う、真相はこう」ってなって、読者は最初から最後まで振り回されっぱなしである。

この作者は本当に意地が悪い。

ミステリー作家向きと言えばその通り。

 

個人的には謎解き部分もホラー部分も(ホラー小説は岡本綺堂の怪談以外読まないんだけど)非常に好み。

ただ、作品を読んでて感情移入した登場人物があっさり殺されたりして、結果的に不幸せになる展開が多くて、そこだけは少し辛い。

どうしても小説を読んでると「こいつ良い奴じゃん」とか「幸せになってほしいなあ」とか思っちゃうんだよね。

そういう登場人物が殺されたり不幸せになったりすると「マジか……」って悲しくなる。

「ああ、この人物にはこんな夢があったのに……」とか、「美人だったのに……」とか考えてしまってテンションが下がる。

 

そういうのもそれはそれで好きだけどね!

 

この作品はミステリー的に言えば首無し死体の謎が大きく取り扱われている。

ホラーの部分もそれに関連して、豊臣方の兵士に首を斬られた姫君「淡媛」、登場する旧家である秘守家の数代前の当主によって同じく首を斬られた奥方「お淡」、正体不明の怪物「首無」など、どれもこれも首の無い怪談がメインである。

ミステリーの部分もなぜ首を切らなければならなかったのかという点が明快にされており、非常に楽しめた。

 

ミステリー好きならぜひおすすめしたい。