ちょっと最近、時間の流れが速すぎる

日々の雑談や本の感想などを書いていきます。

森博嗣「数奇にして模型」感想

 

シリーズものの一作品について感想を書くとき、その前作までについての感想も書いた方がいいのかなーとか思うんだけど、いつも面倒くさくなって書けてない。

まあ、ブログを書き始めた時にタイミングよくシリーズものを読み始めるなんて言う幸運はそうそうないから仕方ないっちゃ仕方ないか。

ということで申し訳ない(誰に?)けれど、この作品もシリーズものの途中だ。

森博嗣のS&Mシリーズの11作目。

この「S&Mシリーズ」というシリーズ名はどうにもいかがわしい雰囲気があるんだが、帯にもそういう風に書いてあるんだから仕方ない。

別に登場人物にそういう性癖があるわけじゃないので、それを期待して読むのはやめたほうがいいだろう、話自体は面白いから読んで損はなかろうが。

 

S&Mシリーズは、国立N大学に勤務する犀川助教授(今では准教授と呼ぶのが正式だけど、作中の頃にはまだ助教授という呼称だった)とN大学の学生である西之園萌絵が、不可解な殺人事件の謎を解くミステリーもの。

この作品は模型交換会会場の公会堂で発生した首切り殺人事件と、近所の工業大学で発生した殺人事件の容疑者として、首切り死体と同じ部屋に倒れていた寺林という男が疑われる所からスタートする。

ミステリーにはよくある、「明らかに怪しい容疑者がいるものの、その人物を犯人と断定するには不可解な点が多すぎる。他の犯人が居るのでは?」という展開。

こういう筋書きの話は探偵側にも容疑者となった人物側にも大いに感情移入するところがあって、エンタメ性が高くなるんだろうなあ。

まあネタバレになってしまうのであんまり迂闊なことは言えないが、この作品には序盤からミステリー慣れした読者を煙に巻くトリックが仕掛けられていて、作者に翻弄される感じが非常に心地いいミステリーとなっている。

こういう「ミステリーを読んでいるからこそ騙される」っていうタイプの作品って他にもあるんだろうけどあんまりパッと浮かんでこない。

個人的には結構好き。

 

このシリーズは探偵役の犀川助教授とヒロインである西之園萌絵の魅力と言うのが非常にうまく出ていて、どこかかみ合ってない(あえてかみ合わない会話をしているのかも?)二人のやり取りにはニヤニヤしっぱなしである。

それ以外でも、登場人物それぞれの考えだったり信念だったり、あるいはジョークだったりといった箇所も他の小説には見られないような理屈や思想が見られて面白い。

特に犀川助教授の思考が書かれている部分は多少難解な部分もあるけれど、じっくり立ち止まって吟味してみたくなるほど。

小説に影響されやすい自分は、森博嗣作品を読んだ後は決まって変なジョークを思いついたり妙な理論武装をしてみたりしてしまうんだけど、そういう人は自分だけじゃないんじゃないかなあと思う。

いざそれを自分がやってみると、どうしてもあんな風にカッコいい言い回しができなくて悲しくなるのもお決まりのパターンだ。