ちょっと最近、時間の流れが速すぎる

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法条遥「リビジョン」感想 前作よりもさらにややこしい

 

「リライト」に続く四部作の二作目。

主人公である千秋霞は代々千秋家に伝わる鏡を使って、未来を見ることができる能力を持っていた。

1992年秋、霞の息子であるヤスヒコが一週間後に亡くなるビジョンを見た霞はその未来を変えようと奔走するが、霞が行動を変えたことによって過去改変が発生してしまい、さらにヤスヒコが亡くなる運命からも逃れられない。

霞はたとえどのような過去改変が起きようとも、愛する息子ヤスヒコを救うと決意し、夫の邦彦と共に時間のルールに挑む。

 

いやあ、母は強しとは言ったものの、ここまで一途に強い母親は傍から見れば狂気と紙一重なところがある。

読んでて色々とぞっとさせられたし、同時に霞に感情移入してしまう部分もあって、読んでて面白かった。

読み進めるうちにだんだんと霞と邦彦の出会い、またヤスヒコの出生に関しての違和感が増していき、その伏線が最後に回収されるという展開は「リライト」に似たものを感じた。

 

そして「リライト」同様、この作品もとにかくややこしい話になっている。

まず霞が行動を変えることによってなぜ、過去が変わってしまうのかという点。

ここがややこしい。

冒頭で霞はビジョンの力によって未来を見て、発熱したヤスヒコを最初に連れていく病院を変える。

それによって最初にヤスヒコを連れて云った病院が別の病院(歯科医)に変わり、さらには病院で診療した医師の職業まで変化してしまう。

これは医師の過去から改変されているということになり、霞の行動によって発生する改変が非常に大きな影響を与えることが読者に示される。

読み進めている最中には頭が混乱して、何が何やらわからなくなってくる。

 

しかしこの過去改変の理由がヤスヒコにあるらしいということがわかると、この点が若干理解しやすくなってくる。

とにかくヤスヒコの存在が不都合なものであり、それによって過剰なまでの過去改変が起きているのだろうと判明してくるのだ。

そして物語はヤスヒコの出生、霞と千秋の馴れ初めへと向かっていくのである。

物語自体は夫婦と息子の中で繰り広げられるのに、前回の「リライト」よりもさらに話のスケールが壮大になっている。

 

この作品は「リライト」と不可分に絡み合っている部分もあり、「リライト」を読んでいないと理解できない部分も多いだろうと思う。

「リライト」の主要人物である保彦と「リビジョン」でのヤスヒコとの関係も、「リライト」を読んでいなければわからない。

というか、「リライト」「リビジョン」だけを読んでもまだよくわからない。

全四部作であるから、残りの二作品も併せて読まなければ理解はできないのだろう。

残りは「リアクト」「リライブ」の二作であるが、この風呂敷がどのように畳まれるのかにはとても興味がわいてくる。